タイトルを見て、「外資の本質を説いた本かな」とか、「外資系企業を分析した本なら勉強に使えるかな」などと思ったら大間違いだ。本書はそんなお堅い本ではなく、あるデキる金融ディーラーが外資系銀行での仕事や日常をエッセイ仕立てにつづった読み物である。
少しもったいぶって書いたが、その人物はマーケットで「東京屈指のディーラー」としてその名を業界にとどろかせ、外資系銀行でも名高いモルガン銀行で東京支店長まで務めた藤巻健史である。本書は簡単に言えば、その藤巻が業界向けに毎日送っていた手書きファクス通信「プロパガンダ」を単行本化したものである。付け加えるならば、「プロパガンダ」はマーケット予想などのマジメな「本文」と彼の仕事や日常をつづった軽いテイストの「付録」から成っていたが、本書ではその「付録」部分をまとめている。その軽いテイストを伝えるべく一部を紹介しよう。
藤巻がディーリングで膨大な損益を出して円形脱毛症になり、ニューヨーク本社へ報告で送ったファクスの話。
「もう精神的に参りました。損益の数字をこと細かく送るのはつらすぎます。今後は毎日、私の後頭部の写真を撮って送りますから、損益はハゲの大きさで判断してください」
しかし、軽いからといってこの本からは何も学べないと判断するのは早合点だ。後半では、「フジマキ流金融用語全集」で難しい専門用語がわかりやすく解説されているし、「フジマキ流マーケットの見方」では、19年間勝ち続けた時代のノウハウが惜し気もなく披露されている。そして何よりも、第一線で活躍していたディーラーの仕事とはどんなものなのか、日常はなにをやっているのか、ハードルの高そうな外資系銀行の実態…などを垣間見ることができる。
「プロパガンダ」を愛読していた人は保存版としてなつかしい読み物になるだろう。ディーラーという仕事に興味を持っている人、堅苦しい金融本はちょっとという人にオススメしたい。笑えること間違いなしである。(大角智美)